はじめての法律手続きガイド|相続・登記・契約・労務をゼロから

このガイドで分かること|法律の手続きは初心者でもできる?

親が亡くなった、実家の名義を変えたい、離婚を考えている、会社をやめる、お店を開きたい。人生の大きな出来事のあとには、たいてい「法律の手続き」がついてきます。けれども、多くの人にとっては初めての経験です。何から始めればよいのか、どこへ行けばよいのか、誰に聞けばよいのかが分からず、不安になるのは自然なことです。

このガイドは、法律の手続きにはじめて向き合う人のための入門ページです。結論から言うと、手続きの多くは、「いつまでに・どこへ・何を出すか」を知れば、自分で進めたり、専門家に上手に頼んだりできます。逆に、つまずく原因の多くは、法律の難しさよりも「期限があることを知らなかった」「出す場所を間違えた」ことにあります。

こんな人に向けて書いています

  • 親や家族の相続(亡くなった人の財産や借金を引き継ぐこと)に、はじめて関わる人
  • 実家や土地の名義変更が必要な人、家や土地を持っていて引っ越しや結婚で住所・氏名が変わった人
  • 遺言書を書きたい、または家族の遺言書が見つかった人
  • 離婚の話し合いを始める人、養育費のことを知りたい人
  • 会社をつくりたい人、個人事業(ひとりで商売をすること)を始めたい人
  • 契約書を交わす、お金を貸す、トラブルに巻き込まれた人
  • 退職する人、残業代や解雇のことで悩んでいる人

このガイドの読み方

まず、このあとに続く「全体像」「窓口」「専門家」の3つの章で「地図」を手に入れてください。そのあと、自分に関係のある場面の章を読みます。締め切りの日を自分で計算したいときは「期限の数え方」の章、このガイドで扱う主な期限をまとめて見たいときは「主な期限の一覧」の章を見てください。ことばが分からなくなったら、ページ後半の「用語ミニ辞典」を見てください。各章の最後に「ここまでで覚えておくこと」を置いています。

まず誰かに聞きたいときは、法テラス(国がつくった法律トラブルの案内所)の「サポートダイヤル」0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時)に電話すると、問題に合った相談先を案内してもらえます。職場のトラブルなら、後で紹介する「総合労働相談コーナー」が窓口です。

このページは、2026年10月時点で、法務省・裁判所・国税庁・日本年金機構などの公式情報で確認できた内容をもとにしています。法律の一般的な説明であり、あなたの個別の事情についての法律相談ではありません。手数料や期限は変わることがあるので、手続きの前に最新は公式で確認してください。

ここまでで覚えておくこと:法律の手続きは「いつまでに・どこへ・何を出すか」の3点を押さえれば、迷いが大きく減ります。期限を知らずに過ぎてしまうことが、いちばん避けたい失敗です。

法律の手続きとは|全体像を図で見る

法律の手続きとは、法律で決められたルールにしたがって、役所や裁判所などに書類を出したり、届け出たりすることです。たとえるなら「宛先と締め切りが決まっている手紙」のようなものです。宛先(窓口)を間違えると届かず、締め切り(期限)を過ぎると不利になることがあります。

手続きは、大きく次の4つの問いに分けると整理できます。

  1. 何が起きたか(出来事):家族の死亡、結婚・離婚、引っ越し、開業、退職、トラブルなど
  2. いつまでに(期限):7日以内、3か月以内、3年以内など、法律や制度で決まっています
  3. どこへ(窓口):市区町村役場、法務局、家庭裁判所、公証役場、税務署、労働基準監督署、年金事務所など
  4. 誰に頼むか(専門家):自分で進めるか、弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士に頼むか
法律の手続きの全体像。出来事から期限、窓口、専門家へと進む4つのステップを示した図
法律の手続きは「出来事→期限→窓口→専門家」の順に考えると整理しやすい

たとえば「親が亡くなった」という出来事なら、死亡届は市区町村役場へ、相続放棄(借金などを引き継がないための手続き)は家庭裁判所へ、実家の名義変更は法務局へ、相続税の申告は税務署へ、と窓口が分かれます。1つの出来事から、いくつもの窓口に別々の手続きが生まれる。これが、法律の手続きが分かりにくく感じられるいちばんの理由です。

ここまでで覚えておくこと:1つの出来事から、窓口の違う手続きがいくつも生まれます。まず「出来事→期限→窓口→専門家」の順に紙に書き出すと、全体が見えてきます。

どこに何を出す?|法律手続きの窓口と役割

ここでは、法律の手続きでよく出てくる窓口を紹介します。名前が似ていて分かりにくいので、「説明」で覚えてください。表の中の手続きの名前は、今は全部を覚えなくて大丈夫です。あとの章で、場面ごとに説明します。

窓口 説明 手続き
市区町村役場 住んでいる町の役所 死亡届・離婚届・婚姻届、戸籍や住民票の取得、国民健康保険・国民年金の切り替え
法務局 土地・建物と会社の「名簿」を管理する国の役所 不動産の名義変更(登記)、会社をつくるときの登記、遺言書の保管、家族関係を1枚の図にした書類(法定相続情報一覧図)の交付
家庭裁判所 家族や相続の問題を扱う裁判所 相続放棄、遺言書の検認(遺言書の形や状態を確認して証拠として残す手続き。遺言が有効か無効かを判断するものではない)、離婚や遺産の分け方の話し合い(調停)、判断が難しくなった人を支える人の選任(成年後見)
簡易裁判所・地方裁判所 お金の請求などの争いを扱う裁判所 請求額140万円以下は簡易裁判所、それを超えると地方裁判所
労働局 都道府県ごとに置かれた、厚生労働省の出先の役所 職場のトラブルの相談(総合労働相談コーナー)
ハローワーク 国の仕事の紹介と、失業手当の窓口 失業手当(雇用保険から出るお金)の手続き
銀行など金融機関 亡くなった人の口座がある所 亡くなった人の預金の払い戻し・名義変更(相続の手続き)
公証役場 「公正証書」という強い証拠力のある文書を作る所 公正証書の遺言、養育費などの取り決めの公正証書、株式会社をつくるときのルールブック(定款)の確認(認証)
税務署 国の税金の窓口 所得税の確定申告(1年のもうけと税金を計算して出すこと)、亡くなった人の分の確定申告(準確定申告)、相続税の申告、開業届
労働基準監督署 働く人を守るルールが守られているかを見る国の役所 残業代の未払いや解雇予告など、会社の法律違反の相談、仕事中のけがの保険(労災保険)の請求
年金事務所 年金の窓口(日本年金機構) 年金の受け取り、亡くなった人の年金の手続き、離婚のときの年金の記録の分け方(年金分割)
主な窓口と扱う手続きを対応させた図。役所・法務局・家庭裁判所・簡易裁判所・公証役場・税務署・労働基準監督署・年金事務所
窓口ごとに扱う手続きが決まっている

ポイントは、法務局は「登記(とうき)」、家庭裁判所は「家族と相続」、税務署は「税金」と大まかに覚えることです。登記とは、土地や建物がだれのものか、会社がどんな会社かを、国の記録に書き込むことです。たとえるなら、国が管理する「持ち主名簿」に名前を書く作業です。

家庭裁判所というと「争いごと」のイメージがありますが、相続放棄や遺言書の検認のように、争いがなくても使う手続きが多くあります。裁判所に行くことを怖がる必要はありません。窓口や電話で手続きの案内を受けられます。

ここまでで覚えておくこと:名義変更は法務局、相続放棄や離婚調停は家庭裁判所、税金は税務署、働き方のトラブルは労働基準監督署、年金は年金事務所。届け出の多くは市区町村役場から始まります。

弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社労士の違いとは

法律の手続きを助ける専門家には、いくつかの資格があります。それぞれ、法律で「できる仕事」が決められています。病院で、内科・外科・歯科が分かれているのと似ています。

専門家 説明 頼めること 相談の目安
弁護士 法律の争いの代理人 相手との交渉、調停・裁判の代理、法律相談全般 相手ともめている、もめそう、訴えられた
司法書士 登記の専門家 不動産や会社の登記、裁判所や法務局に出す書類の作成。法務大臣の認定を受けた司法書士は、請求する金額が140万円以下のもめごとについて、簡易裁判所での裁判の代理もできる 不動産の名義変更、会社の登記、少額のお金の請求
行政書士 役所に出す書類づくりの専門家 役所に出す書類(飲食店の営業許可など、営業に必要な許可の申請=許認可)や、契約書などの書類の作成 許可の申請、契約書や遺産分割協議書(遺産の分け方を書いた書面)の作成
税理士 税金の専門家 税金の申告の代理、税務書類の作成、税務相談 相続税・確定申告・会社の税務
社会保険労務士(社労士) 働くルールと社会保険の専門家 健康保険・年金・雇用保険などの手続き、会社の職場のルール(就業規則)づくり、労務相談 従業員を雇う、社会保険の手続き、職場のルールづくり
5つの専門家の得意分野を比較した図。争い・登記・役所の書類・税金・労務と社会保険
迷ったら「争いなら弁護士、名義変更なら司法書士、税金なら税理士」

迷ったときのいちばん簡単な目安は、次の3つです。

  1. 相手ともめている、またはもめそうなら、弁護士
  2. 名義変更(登記)なら、司法書士
  3. 税金がかかりそう、申告が必要そうなら、税理士

司法書士が法務大臣の認定を受けているかどうかは、依頼する前に本人に聞けば教えてもらえます。専門家に頼むと費用がかかりますが、期限が迫っているとき、相手との交渉が必要なとき、金額が大きいときは、早めの相談が結果的に安く済むこともあります。どの事務所に頼むかは自由です。この記事では特定の事務所はすすめません。報酬は事務所ごとに決められているので、依頼の前に見積もりを出してもらい、何が含まれる金額かを確認しましょう。

お金に余裕がない人には、法テラスの無料法律相談があります。収入(平均月収)や資産(現金・預貯金)が一定の基準以下であることなどの条件があり、1つの問題につき3回までです。自分が条件に当てはまるかは、法テラスのサポートダイヤルや、法テラスのホームページで確認できます。

ここまでで覚えておくこと:争いは弁護士、登記は司法書士、役所の書類は行政書士、税金は税理士、労務と社会保険は社労士。費用が心配なら、まず法テラスや自治体の無料相談を確認します。

まず覚えたい5つの言葉|法律手続きの基本用語

法律の手続きで、くり返し出てくる言葉のうち、まず5つだけ覚えてください。ほかの言葉は、ページ後半の「用語ミニ辞典」で、分からなくなったときに見れば十分です。

用語 説明
相続人(そうぞくにん) 亡くなった人の財産や借金を引き継ぐ人(配偶者と子どもが相続人になることが多い)
相続放棄(そうぞくほうき) 財産も借金も引き継がないと、家庭裁判所に申し出ること(借金が多いときの選択肢)
登記(とうき) 国の「持ち主名簿」に記録すること(家の名義を父から子へ書き換える)
検認(けんにん) 家庭裁判所で、遺言書の形や状態を記録しておく手続き(自宅で見つかった手書きの遺言書で必要)
過料(かりょう) 手続きを怠ったときに払わされる、行政上のお金のペナルティ(刑罰の「罰金」とは違い、前科にはならない)

ここまでで覚えておくこと:「相続人」「相続放棄」「登記」「検認」「過料」の5つを覚えるだけで、説明がぐっと読みやすくなります。

期限の数え方|「〜から3か月」は何日まで?

自分でカレンダーに締め切りを書き込めるように、期限の数え方の共通ルールを先に説明します。このページでは、期限を「起点の日(知った日・亡くなった日・退職日など)」と「1日目」で書き分けています。

  1. 原則:起点の日は数えず、起点の日の翌日を1日目にする。民法140条のルールです。たとえば起点の日が4月10日で「10日以内」なら、4月11日が1日目で、10日目の4月20日が最終日です。
  2. 「〜か月」「〜年」の期限:1日目から数えて、カレンダーの同じ日付の前日までです(民法143条)。起点の日が4月10日なら、1日目は4月11日なので、「3か月」は7月11日の前日の7月10日まで、「3年」は3年後の4月10日までです。
  3. 例外:死亡届は、戸籍法で「その日から数える」と決まっているので、死亡を知った日そのものが1日目です。4月10日に知ったら、7日目の4月16日までです。
  4. 最終日が休日のとき:手続きによって扱いが違います。税金の申告は、最終日が土日・祝日などに当たると次の平日が期限になります(国税庁の案内)。そのほかの手続きは、最終日が休日のときの扱いを窓口で確認しましょう。迷ったら、休日の前の平日までに済ませるのが安全です。

例を1つだけ挙げます。起点の日が4月10日のとき、次のようになります。

期限 1日目 最終日
10日以内 4月11日 4月20日
3か月以内 4月11日 7月10日
7日以内(死亡届だけ) 4月10日(当日) 4月16日

このガイドで扱う主な手続きの起点の日と最終日の例は、「主な期限の一覧」の表にまとめています。

期限の数え方の図。起点の日の翌日が1日目になること、死亡届だけは当日が1日目になることを、カレンダーのマス目で示した
期限の数え方。起点の日の翌日が1日目

ここまでで覚えておくこと:期限は「起点の日の翌日を1日目」に数えるのが原則で、「〜か月」「〜年」は同じ日付の前日までです。死亡届だけは当日が1日目です。最終日が休日のときは、扱いを確認します。

場面別|法律の手続きの流れ(時系列)

ここからは、よくある場面ごとに、手続きの流れを時系列で紹介します。自分に関係のある場面だけ読めば大丈夫です。日付の例は、どれも起点が「4月10日」の場合です。

親が亡くなったとき|相続手続きの流れと期限

相続の手続きには、期限が近い順に並ぶいくつかの「締め切り」があります。最初に全体の時間割を知っておくと、慌てずにすみます。下の図は相続の期限だけを並べたものです。

手順は12ありますが、時期で3つに分けると考えやすくなります。

  • 【最初の2週間ごろ】手順1〜4:死亡届、年金・健康保険、遺言書の確認、戸籍集め
  • 【3か月以内】手順5〜6:財産と借金を調べ、相続放棄をするか決める
  • 【そのあと】手順7〜12:税金の申告、遺産の分け方、預金と不動産の名義の手続き
相続の時間軸。7日以内の死亡届、10日・14日以内の年金の届け出、3か月以内の相続放棄、4か月以内の準確定申告、10か月以内の相続税申告、1年以内の遺留分の請求、3年以内の相続登記
相続の主な期限。数字が近いので取り違えに注意
  1. 【最初の2週間ごろ】死亡届を出す(7日以内):起点の日は死亡を知った日で、死亡届だけは例外として、その当日を1日目に7日以内です(国外で亡くなったときは3か月以内)。4月10日に病院で亡くなり、その日に知ったなら、4月16日までです。届け出るのは、同居していた親族などで、同居していない親族も届け出られます。市区町村役場に、病院でもらう死亡診断書を添えて出します。実際の提出は、葬儀社が代わりに窓口へ持って行ってくれることも多いです。

  2. 年金と健康保険の手続き:

    • 年金を止める届け出(死亡のときの年金の届け出):起点の日は亡くなった日で、その翌日を1日目として、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です(4月10日に亡くなったら、4月20日・4月24日まで)。
    • どちらの年金か:会社員や公務員として働いていた人は厚生年金も受け取っていることが多く、自営業などだった人は国民年金だけのことが多いです。年金証書を見るか、年金事務所に聞けば確実です。
    • 届け出が要らない場合:亡くなった人のマイナンバーが日本年金機構に登録されている場合は、原則として不要です(マイナンバーカードを持っていたかどうかとは別の話です)。分からなければ年金事務所に電話で確認します。
    • 健康保険:亡くなった人の資格をなくす手続きが必要です(市区町村の国民健康保険なら役場、会社の保険なら勤務先)。
  3. 遺言書があるか確かめる:自宅で手書きの遺言書が見つかったら、勝手に開けずに家庭裁判所で検認を受けます。法務局に保管された遺言書は、検認がいりません。

  4. 相続人を確かめる(戸籍を集める):亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めて、相続人がだれかを確定します。結婚や本籍の移動、法律の改正による作り直しなどで戸籍は新しくなるので、1人分が何通にも分かれていることがよくあります。

    • 広域交付:2024年3月1日からは、本籍地(戸籍が置かれている場所)以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できるようになりました。請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍です。窓口に自分で行く必要があり、郵送や代理人による請求はできません。
    • 広域交付で取れない戸籍:亡くなったのがきょうだいやおじ・おばなどの場合は、広域交付が使えません。その人の本籍地の市区町村に、郵送などで請求します。相続人として手続きに必要なことを書いて請求し、手数料は定額小為替(郵便局で買える、お金の代わりに送れる証書)で払うのが一般的です。方法は各市区町村のホームページで確認できます。
    • 本籍地が分からないとき:本籍を載せた住民票を取ると分かります。
  5. 【3か月以内】財産と借金を調べる:預金、不動産、株、そしてローンや借金も調べます。3か月以内に相続放棄するかを決めるには、ここがいちばん大事です。調べる手がかりは次のとおりです。

    • 郵便物:銀行・カード会社・消費者金融からの請求書や利用明細、督促状がないか見る。
    • 通帳:ローンの引き落としや、決まった相手への返済の振り込みがないか見る。
    • 信用情報機関:ローンやクレジットカードの利用記録を集めている民間の機関です。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3つがあり、どれも亡くなった人の法定相続人(法律で決まっている相続人)からの開示の申し込みを受け付けています。各機関のホームページの案内に沿って、郵送などで申し込みます(手数料がかかります)。ただし、個人からの借金などは載らず、すべてが分かるわけではありません。
    • 固定資産税(土地や建物の持ち主が毎年市区町村に払う税金)の納税通知書:亡くなった人が持っていた土地や建物が分かります。

    相続放棄をするかもしれないうちは、亡くなった人の預金を引き出したり、口座を解約したり、遺品を売ったりしないでください。民法では、相続人が遺産を処分すると、相続することを認めたとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。葬儀代を亡くなった人の口座から払ってよいかなど、どこまでなら問題ないかは事情によって判断が分かれます。迷ったら、お金を動かす前に弁護士・司法書士に確認しましょう。

  6. 相続放棄をするか決める(3か月以内):借金が財産より多そうなときの選択肢です。

    • 期限:起点の日は「自分が相続人になったことを知った日」で、その翌日を1日目として3か月以内です。4月10日に知ったなら7月10日まで。親子ならふつうは亡くなった日に知ります。ただ、たとえば疎遠だったおじが亡くなり、おじに配偶者も子もおらず、おじの親もすでに亡くなっていて、おじのきょうだいである自分の親も先に亡くなっている場合は、おじのおい・めいである自分が相続人になります。このように、半年後に自分が相続人だと知ったときは、知った日が起点の日になります。
    • どこへ:亡くなった人の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所。どこが受け持ちかは、裁判所のホームページの「申立書提出先一覧」で調べられます。
    • 何を出す:「相続放棄の申述書」(書式は裁判所のホームページにある)と、亡くなった人の住民票の除票(亡くなって消された住民票の記録)または戸籍の附票(住所の移り変わりの記録)、自分の戸籍謄本(戸籍の全員分の写し)など。
    • 費用:申し出る人1人につき800円分の収入印紙(国に手数料を払うための切手のような紙。郵便局などで買える)と、連絡用の郵便切手。
    • 期間を延ばしたいとき:3か月では財産を調べきれないときは、家庭裁判所に「期間を延ばしてほしい」と申し立てられます(相続の承認又は放棄の期間の伸長)。ただし、この申立ても3か月以内にしなければなりません。3か月が過ぎてから延ばしてもらうことは、原則としてできません。
    • 放棄したあと:放棄した人は「初めから相続人でなかった」ことになり、亡くなった人の借金を払わなくてよくなります。ただし借金そのものは消えず、次の順位の人が新しく相続人になります。たとえば子が全員放棄すれば親や祖父母に、親や祖父母もいないか全員放棄すれば、きょうだい(すでに亡くなっていればその子のおい・めい)に移ります。その人たちにも3か月の期限が始まるので、放棄したことを早めに伝えておきましょう。
  7. 【そのあと】準確定申告(4か月以内):亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得について、確定申告が必要な人だった場合に、相続人が代わりに申告します。たとえば、個人事業をしていた人や、アパートなどの家賃収入があった人です。会社の給料や年金だけで暮らしていた人は不要なこともあり、逆に申告すると税金が戻る(還付)こともあります。期限は、起点の日が「亡くなったことを知った日」で、その翌日を1日目として4か月以内です(4月10日に知ったなら8月10日まで)。迷ったら、税務署に聞くのが確実です。

  8. 遺産分割協議:相続人全員で分け方を話し合い、結果を遺産分割協議書という書面にします。話し合いそのものに期限はありませんが、相続税の申告(10か月)や相続登記(3年)の期限に間に合うよう進める必要があります。まとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停を使えます。

  9. 預金の手続き:亡くなった人の口座がある銀行などに、亡くなったことを伝えます。

    • 伝えたあと:その口座からの出し入れは止められるのが一般的です。払い戻しや名義変更には、戸籍(または法定相続情報一覧図)、遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などが求められます。必要な書類は銀行ごとに違うので、各銀行の相続の窓口で確認しましょう。
    • 葬儀代など当面のお金:遺産分割の前でも、相続人は1人で、預金の一部の払い戻しを受けられます(遺産分割前の預貯金の払戻し制度。民法909条の2)。受け取れるのは、口座ごとに「亡くなった時の預金額×3分の1×その相続人の法定相続分」までで、同じ銀行からは150万円が上限です(法務省の案内)。「法定相続分」とは、民法が決めている、相続人ごとの取り分の目安の割合です(民法900条)。主な例は次のとおりです。

      • 配偶者と子が相続人:配偶者2分の1、子は残りの2分の1を人数で等分(子2人なら各4分の1)
      • 配偶者と親が相続人:配偶者3分の2、親3分の1
      • 配偶者ときょうだいが相続人:配偶者4分の3、きょうだい4分の1
      • 子だけ(配偶者がいない):子が全部を人数で等分

      計算例:相続人が配偶者と子2人で、預金600万円の口座から子の1人が払い戻しを受ける場合、子1人の法定相続分は4分の1なので、600万円×3分の1×4分の1=50万円までです。

    • 相続放棄を考えている人:払い戻しを受けて使うと、放棄に影響するおそれがあります。この制度を使う前に、弁護士・司法書士や法テラスに相談しましょう。それまでは、家族が葬儀代を立て替えておく方法もあります。

  10. 相続税の申告(10か月以内):遺産の額が基礎控除(税金がかからない枠)を超えるときは、起点の日を「亡くなったことを知った日」として、その翌日を1日目に10か月以内に税務署へ申告します。国税庁の例では、1月6日に亡くなった(その日に知った)場合、数え始めは1月7日で、11月6日が期限です。4月10日に知ったなら翌年2月10日です。

  11. 遺留分の請求(1年以内):遺留分は、配偶者・子・親などに法律で守られた最低限の取り分です。遺言などでそれより少なくされた人が、多くもらった人にお金を請求できます(くわしくは遺言の章)。

  12. 相続登記(3年以内):不動産を相続したら、法務局で名義変更をします。起点の日は「不動産の取得を知った日」で、その翌日を1日目として3年以内です(4月10日に知ったなら3年後の4月10日まで)。くわしくは次の「実家・土地の名義変更」で説明します。

ここまでで覚えておくこと:相続は「最初の2週間ごろ→3か月以内→そのあと」の3つの時期に分けて進めます。相続放棄を考えているうちは預金に手を付けず、借金を早めに調べます。期限の一覧は図と「主な期限の一覧」の表を見てください。

実家・土地の名義変更|相続登記と住所変更登記の義務化

不動産の名義変更は、法務局で「登記」をする手続きです。以前は、しなくても罰則がありませんでした。そのため、亡くなった人の名義のまま放置され、持ち主が分からない土地が全国で増えてしまいました。これを防ぐために、ルールが変わりました。

  • 相続登記の義務化(2024年4月1日から):相続で不動産を取得したことを知った日(起点の日)の翌日を1日目として、3年以内に相続登記をしなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に相続した不動産で、まだ登記していないものも対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
  • 相続人申告登記:遺産分割の話し合いがまとまらず、3年以内に登記できそうにないときの簡単な手続きです。
    • どんな手続きか:相続登記の期限内に、相続人が「自分が相続人です」と法務局に申し出ます。ほかの相続人の同意なしに1人でできます。
    • だれの義務が済むか:義務を果たしたとみなされるのは、申し出た本人だけです(法務省の案内)。家族の代表1人が自分の名前だけで申し出ても、ほかの相続人の義務は済みません。
    • 全員分を済ませるには:相続人それぞれが申し出るか、1枚の申出書に申し出る人全員の名前を書いて(連名で)まとめて申し出ます。連名なら、名前を書いた全員の義務が済みます。
    • 注意:何もしないまま3年が過ぎると、正当な理由がない限り、その人が10万円以下の過料の対象になりえます。また、相続人申告登記は正式な名義変更ではありません。その後に遺産分割がまとまったら、まとまった日(起点の日)の翌日を1日目として3年以内に、その結果に基づく登記をする必要があります。
  • 住所変更登記の義務化(2026年4月1日から):不動産の持ち主が引っ越しや結婚などで住所・氏名を変えたら、変更の日(起点の日)の翌日を1日目として、2年以内に変更登記をしなければなりません。正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になります。2026年4月1日より前の変更で登記していないものも対象で、期限は2028年3月31日です。家や土地を持っていない人には関係ありません。
  • スマート変更登記:住所変更登記を自動にするしくみです。
    • しくみ:法務局に生年月日などの「検索用情報」を一度申し出ておくと、住所が変わったときに法務局が住民基本台帳ネットワーク(住民票の情報を役所どうしでつなぐしくみ)で変更を見つけ、本人に確認したうえで変更登記をしてくれます。
    • 申し出る方法:申出は無料です。登記を申請するときにあわせて申し出られるほか、すでに持ち主になっている人も、法務省の「かんたん登記・供託申請」のページなどから申し出られます。
    • 効果:法務省の案内では、申し出ておけば、住所が変わるたびに自分で登記申請をしなくても義務違反に問われなくなります(海外に住んでいる人は対象外)。

相続登記は自分で行うこともできます。法務局では、自分で登記を申請する人向けに「登記手続案内」をしています。予約制で、電話・窓口・ウェブ会議のいずれかで、1回20分程度です。相続人が多い、土地が何か所にもある、昔の名義のまま何代も放置されている、といった場合は、司法書士に相談するのが現実的です。

ここまでで覚えておくこと:相続登記は「取得を知った日の翌日を1日目に3年以内」、住所変更登記は「変更の日の翌日を1日目に2年以内」。相続人申告登記で義務が済むのは、申し出た本人だけです。どちらも、ルールが始まる前の分も対象です。

遺言書を書きたいとき・見つかったとき

遺言書は、自分の死後に財産をどう分けるかなどを書き残す書面です。よく使われるのは、次の2つです。

種類 作り方 特徴
自筆証書遺言 自分で手書きする(財産の一覧はパソコンで作ることも可) 費用がかからない。形式を間違えると無効になるおそれ。法務局で保管してもらうこともできる
公正証書遺言 公証役場で、公証人に作ってもらう 形式の不備が起こりにくい。手数料がかかる。検認は不要

自筆の遺言書は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」で預けることができます。手数料は1通につき3,900円です。預けた遺言書は、亡くなったあとの家庭裁判所の検認がいりません。自宅で保管していた手書きの遺言書は、見つけた人や預かっていた人が、家庭裁判所に検認を申し立てます。費用は遺言書1通につき800円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手です。

検認は、遺言書の形や状態、日付、署名などをその日の時点で記録して、あとから書き換えられるのを防ぐための手続きです。遺言が有効か無効かを決める手続きではありません。封がしてある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立ち会いのもと開封する決まりなので、見つけても自分で開けないでください。

また、遺言があっても、配偶者・子・親などには「遺留分(いりゅうぶん)」という、最低限の取り分が法律で守られています(きょうだいには遺留分はありません)。遺留分より少ない取り分にされた人は、多くもらった相手にお金を請求できます。まずは相手に請求し(出した手紙の内容を郵便局が証明してくれる「内容証明郵便」を使うことが多い)、まとまらなければ家庭裁判所の調停を使います。この請求の権利は、相続が始まったこと(=亡くなったこと)と、取り分が少なくされたことの両方を知った日(起点の日)の翌日を1日目として、1年で時効になります。

ここまでで覚えておくこと:手書きの遺言書は法務局に預けると検認が不要になります。見つけた遺言書は開けずに、家庭裁判所へ。

離婚するとき|2026年4月からのルール

離婚の多くは、夫婦の話し合い(協議離婚)で決まり、市区町村役場に離婚届を出して成立します。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の離婚調停を使います。調停の申立て費用は1,200円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手です。

2026年4月1日に、離婚と子どもに関するルールが大きく変わりました。

  • 共同親権:これまでは、離婚後は父母のどちらか一方だけが親権者でした。改正後は、父母の話し合いで、共同親権(両親がともに親権を持つ)か単独親権かを選べます。話し合いで決まらないときは、家庭裁判所が子どもの利益の観点から決めます。共同親権にすると、子どもに関する大事なことは原則として父母が一緒に決めることになります。ただし、ふだんの食事や習い事のような日常のことや、子どものために急ぐ必要があることは、一方の親だけで決められると民法に定められています。
  • 法定養育費:養育費の取り決めをしないまま話し合いで離婚した場合でも、子どもと主に暮らす親が、もう一方の親に一定額を請求できる制度です。
    • 金額:法務省の発表では、子ども1人につき月額2万円です(子2人なら月4万円)。
    • いつの分から:離婚の日からの分です。請求するのが離婚から少し後になっても、離婚の日の分から求められます。支払いは毎月末ごとです。
    • いつまで:次のうち、いちばん早い日までです。父母が養育費の取り決めをした日。養育費について家庭裁判所が決めた内容が確定した(もう変えられなくなった)日。子どもが18歳(成年)になった日。
    • 例外:払う側が、支払う力がないことを証明すれば、支払いを拒める場合があります。
    • 位置づけ:2026年4月1日以降の離婚が対象で、正式な取り決めをするまでの「つなぎ」です。
  • 財産分与と年金分割の期限:夫婦の財産を分ける財産分与の請求期限は、これまで離婚から2年でしたが、5年に延びました。年金分割の請求期限も、同じく2年から5年に延びました。ただし、2026年4月1日より前に離婚した場合は、これまでどおり2年です。

養育費や財産分与の取り決めは、口約束ではなく書面にし、できれば公証役場で公正証書にしておくと、支払いが止まったときに備えやすくなります。

ここまでで覚えておくこと:2026年4月より前の離婚と後の離婚では、使うルールが違います。取り決めは書面(できれば公正証書)にしておきます。

会社をつくる・個人事業を始めるとき

自分で商売を始める方法には、大きく「個人事業」と「会社の設立」があります。どちらが良いかは、事業の大きさや目的で変わるので、このガイドではどちらかをすすめることはしません。違いを表にまとめます。

会社は株式会社・合同会社
比べる点 個人事業 会社
始める手続き 税務署に開業届を出す 定款を作り、法務局で設立の登記をする(株式会社は公証役場で定款の認証も)
始めるときの国へのお金 開業届は無料 登録免許税(登記のときに国に納める税金)が最低でも株式会社15万円・合同会社6万円
税金 もうけに所得税がかかり、本人が確定申告する 会社のもうけに法人税などがかかり、会社として申告する
健康保険・年金 事業主本人は国民健康保険・国民年金。従業員が常時5人以上になると、従業員が会社員と同じ健康保険・厚生年金の対象になる(農林漁業やサービス業など一部の業種は対象外。くわしくは年金事務所で確認。事業主本人は対象外) 社長1人だけの会社でも、健康保険・厚生年金に入る必要がある
情報の公開 登記はない 会社の名前・所在地・役員などが登記され、だれでも登記事項証明書で見られる

小さく始めるなら個人事業から、という人も多いですが、事業の内容や見込みの売上によって向き不向きがあります。迷ったら、税務署や税理士、地域の商工会議所・商工会などに相談しましょう。

個人事業を始めるときは、税務署に「開業届」を出します。2026年1月1日以後の開業については、開業した年の分の確定申告の期限まで、つまり原則として開業した年の翌年3月15日(土日祝日なら次の平日)までに出せばよいことになりました。たとえば2026年4月に開業したなら、2027年3月15日までです。2025年12月31日までの開業は、開業から1か月以内が期限でした。

青色申告とは、決められた形で帳簿をつけて確定申告をすると、もうけ(所得)から最高65万円を差し引けるので、そのぶん税金が安くなるなどの特典があるしくみです。使いたいときは「青色申告承認申請書」を、原則として開業した日から2か月以内(1月1日から1月15日までの開業は、その年の3月15日まで)に税務署へ出します。

取引先から「インボイス(登録番号の入った請求書)を出してほしい」と言われたときは、登録すると消費税の申告が必要になるなど影響が大きいので、税務署か税理士に相談しましょう。

会社の形には主に株式会社と合同会社があります。合同会社は、お金を出した人がそのまま経営する形の会社で、設立の費用が株式会社より安く、小さな事業で選ばれることがあります。設立の登記にかかる登録免許税は、資本金(会社を始めるときに出資者が出すお金)で決まります。

ここまでで覚えておくこと:個人事業は税務署に開業届、会社は法務局に設立登記。違いは「手続き・費用・税金・社会保険・情報の公開」で比べ、迷ったら税務署や税理士に相談します。

契約書・お金の貸し借り・トラブルのとき

契約は、口約束でも成立するのが原則です。それでも契約書を作るのは、あとで「言った・言わない」の争いを防ぐためです。お金を貸すときは、金額・返す日・利息を書いた借用書を作っておくと安心です。契約書の種類や金額によっては、印紙税(契約書に収入印紙を貼って納める税金)がかかります。

お金を返してもらえないときは、次の順に考えるのが一般的です。

  1. 話し合いと記録:まず連絡し、やりとりを記録に残します。
  2. 内容証明郵便:請求した事実と内容を、郵便局に証明してもらいます。
  3. 支払督促:簡易裁判所が、書類だけで相手に支払いを命じる手続きです。相手が「納得できない」と申し立てる(異議)と、通常の裁判に移ります。
  4. 少額訴訟:60万円以下のお金の請求について、原則1回の審理で判決が出る簡易裁判所の手続きです。

金額と裁判所の関係を整理すると、請求額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超えると地方裁判所です。そのうち60万円以下なら、簡易裁判所の「少額訴訟」という早い手続きも選べます。司法書士が代理できる「140万円以下」は、この簡易裁判所の範囲のことです。

注意したいのが消滅時効です。お金を請求できる権利(債権)は、一定の期間使わないと時効で消えることがあります。2020年4月以降の契約などで生まれた債権は、次の2つのうち、どちらか早いほうが来た時点で時効になります(民法166条)。

  • 請求できることを知った日から5年
  • 請求できるようになった日から10年

お金を貸した人は、ふつう「返してもらう日」を自分で知っているので、5年のほうが先に来ます。たとえば、2024年12月1日に返してもらう約束で友人にお金を貸した場合、返済日を起点の日として、その翌日を1日目に数えた5年後の2029年12月1日が過ぎると、時効になるおそれがあります。「10年あるから大丈夫」とは考えず、5年を目安に早めに請求しましょう。

内容証明郵便で請求しても、時効のカウントがゼロに戻るわけではありません。内容証明による請求は「催告(さいこく)」にあたり、その時から6か月の間だけ時効が完成しなくなる(先に延びる)効果しかありません(民法150条)。その6か月の間に裁判を起こす(支払督促や少額訴訟を含む)などしないと、時効を止められません。また、催告をくり返しても延びるのは1回だけです。時効が近いときは、早めに弁護士・司法書士に相談しましょう。時効が来ても自動で消えるわけではなく、相手が「時効なので払わない」と主張(援用)すると請求できなくなります。2020年3月以前の契約などには改正前のルールが使われるので、古い貸し借りは専門家に確認しましょう。

なお、2026年5月21日からは、お金や契約など個人や会社どうしの争いの裁判(民事訴訟)の手続きがデジタル化され、オンラインで訴えを起こせるようになりました。

買い物や訪問販売のトラブルは、クーリング・オフ(一定期間なら無条件で契約をやめられるしくみ)が使える場合があります。困ったときは消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターを案内してもらえます。

ここまでで覚えておくこと:貸したお金の時効は、5年と10年のどちらか早いほう。ふつうは5年と考えて早めに請求します。買い物のトラブルは188に相談します。

働く人の手続き|退職・残業代・解雇

会社をやめるとき、期間の定めのない雇用(いわゆる正社員など)なら、民法では、やめると申し出てから2週間で雇用が終わるとされています。一方、会社の就業規則(職場のルールブック)に「1か月前までに申し出る」などと書かれていることもあります。法律と就業規則のどちらが優先されるかは、働き方や事情によって考え方が分かれ、このガイドでは言い切れません。もめずに進めるには、まず就業規則を確認し、そこに書かれた時期を守って申し出るのが安全です。それが難しい事情があるときや、会社ともめそうなときは、総合労働相談コーナーに相談しましょう。

退職後は、次の手続きが続きます。期限の起点の日はどれも「退職日」で、その翌日が1日目です(日付の例は、4月10日に退職した場合)。次の会社にすぐ入る場合は、その会社で健康保険と厚生年金に入るので、下の健康保険の3択や国民年金への切り替えは必要ありません。

  • 健康保険:会社の健康保険を続ける「任意継続」、市区町村の国民健康保険、家族の扶養に入る(家族の健康保険に入れてもらう)、のどれかを選びます。協会けんぽ(中小企業の多くが入っている全国健康保険協会)は、毎月の保険料を比べて選ぶよう案内しています。
    • 任意継続:保険料は、退職前に給料から引かれていた額のおよそ2倍(会社が負担していた分も自分で払うため。上限あり)。正確な額は、加入していた健康保険(協会けんぽなら都道府県の支部)に問い合わせると分かります。期限は20日以内(4月30日まで)で、加入できるのは最長2年間。
    • 国民健康保険:保険料は、前年の所得や世帯の人数で決まり、市区町村ごとに違います。住所地の市区町村の窓口に、前年の所得が分かる書類(源泉徴収票など)を持って行くと、見込みの額を教えてもらえます。ホームページで試算できる市区町村もあります。加入の届け出の期限は14日以内(4月24日まで)。
    • 家族の扶養:保険料の負担はないが、収入などの条件を満たす必要がある。家族の勤務先に確認する。
  • 退職のときの国民年金への切り替え:次の会社にすぐ入らないときは、14日以内(4月24日まで)に、住所地の市区町村で国民年金に入る手続きをします。亡くなった人の「年金を止める届け出」とは別の手続きです。配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先を通じて手続きします。
  • 失業手当(雇用保険から出るお金):退職後に会社から届く「離職票」を持って、住所地を受け持つハローワーク(国の仕事の紹介と失業手当の窓口)に行き、仕事探しの申し込みをしてから手続きします。持ち物は、離職票、マイナンバーが分かる書類、本人確認書類、写真2枚(マイナンバーカードを見せれば省略できる)、本人名義の通帳かキャッシュカードです(ハローワークの案内)。受け取れる期間は原則として離職日の翌日から1年なので、離職票が届いたら早めに行きましょう。受け取れる条件や時期は、やめた理由などで変わります。

会社が残業代を払わない、30日前の予告も、予告の代わりに会社が払うお金(解雇予告手当)もなく解雇された、といった労働基準法の違反が疑われるときは、労働基準監督署に相談できます。職場のいじめや、どこに相談すればよいか分からないときは、「総合労働相談コーナー」が、職場のトラブルを1か所でまとめて相談できる、予約不要・無料の窓口です。都道府県の労働局(都道府県ごとに置かれた、厚生労働省の出先の役所)や労働基準監督署の中にあります。場所と電話番号は、厚生労働省のホームページ「総合労働相談コーナーのご案内」に都道府県ごとの一覧があります(「総合労働相談コーナー 都道府県名」で検索しても見つかります)。

ここまでで覚えておくこと:退職日の翌日を1日目として、任意継続は20日以内、国民健康保険と国民年金への切り替えは14日以内。給料や解雇の法律違反は労働基準監督署、何でも相談したいときは総合労働相談コーナーへ。

主な期限の一覧|過ぎるとどうなる?

法律の手続きでいちばん怖いのは、期限に気づかないことです。このガイドで扱う主な期限を、出来事ごとにまとめました(ここにない手続きにも期限があることがあるので、各手続きの公式ページでも確認してください)。自分に関係のある出来事の表だけ見てください。数え方のルールは「期限の数え方」の章で説明しています。

最終日の例は、起点の日をどれも「4月10日」と仮定して計算しています(出来事ごとに起点の日は違うので、自分の日付に置き換えてください)。

家族が亡くなったとき

手続きは窓口別
手続き 起点の日 1日目 期限 最終日の例 過ぎた場合
死亡届(市区町村役場) 死亡を知った日 起点の日(当日) 7日以内 4月16日 過ぎても届け出は受け付けてもらえる。ただし正当な理由なく遅れると5万円以下の過料の対象(戸籍法)。火葬の許可もふつう死亡届と一緒に申請するので、遅れると葬儀も進まない
死亡のときの年金の届け出(年金事務所) 亡くなった日 翌日 厚生年金10日・国民年金14日以内 4月20日・4月24日 亡くなった後に振り込まれた年金を返すことになる
相続放棄(家庭裁判所) 自分が相続人になったと知った日 翌日 3か月以内(期間の延長の申立てもこの間に) 7月10日 原則として放棄できず、借金も引き継ぐ
準確定申告(税務署) 亡くなったことを知った日 翌日 4か月以内 8月10日 遅れたぶんの利息にあたる税(延滞税)などがかかる
相続税の申告(税務署) 亡くなったことを知った日 翌日 10か月以内 翌年2月10日 延滞税や、ペナルティの税(加算税)がかかる
遺留分の請求(相手方へ) 亡くなったことと取り分の不足の両方を知った日 翌日 1年 翌年4月10日 時効で請求できなくなる
相続登記・相続人申告登記(法務局) 不動産の取得を知った日 翌日 3年以内 3年後の4月10日 10万円以下の過料の対象
相続人申告登記のあとの、遺産分割の結果に基づく登記(法務局) 遺産分割がまとまった日 翌日 3年以内 3年後の4月10日 10万円以下の過料の対象

引っ越し・退職・離婚のとき

手続きは窓口別
手続き 起点の日 1日目 期限 最終日の例 過ぎた場合
住所変更登記(法務局。不動産を持つ人だけ) 住所・氏名が変わった日 翌日 2年以内 2年後の4月10日 5万円以下の過料の対象
退職のときの国民年金への切り替え(市区町村) 退職日 翌日 14日以内 4月24日 届け出が遅れても、保険料は退職の翌日の分からさかのぼってかかるのが原則なので、早めに
国民健康保険への加入(市区町村) 退職日 翌日 14日以内 4月24日 同上
任意継続(協会けんぽなど) 退職日 翌日 20日以内 4月30日 任意継続に入れない
財産分与・年金分割 離婚した日 翌日 5年(2026年3月31日までの離婚は2年) 5年後の4月10日 請求できなくなる

開業・お金の貸し借りのとき

手続きは窓口別
手続き 起点の日 1日目 期限 最終日の例 過ぎた場合
開業届(税務署。2026年1月1日以後の開業) 開業した日 ― 開業した年の翌年3月15日(確定申告の期限)まで 2026年4月10日開業なら2027年3月15日 提出の義務を守れていないことになる
青色申告承認申請書(税務署。1月16日以後の開業) 開業した日 翌日 2か月以内 6月10日 その年は青色申告の特典(最高65万円の控除など)を受けられない
貸したお金の時効(2020年4月以降の契約) 返してもらう約束の日(請求できると知った日) 翌日 5年(請求できる日から10年のほうが早ければそちら) 5年後の4月10日 相手が時効を主張すると請求できなくなる

ここまでで覚えておくこと:期限は出来事ごとに確認し、起点も手続きごとに違います。気になる手続きは、カレンダーに締め切り日を書き込んでおきましょう。

2026年の法改正|何が変わった?何が未定?

はじめに、ニュースでよく出る2つの言葉を説明します。「公布(こうふ)」は、新しい法律ができたことを国が正式に発表することです。「施行(しこう)」は、その法律のルールが実際に使われ始めることです。法律は、公布されてもすぐには使われず、準備期間をおいて施行されるのがふつうです。たとえるなら、公布は「新しい校則ができました」というお知らせ、施行は「今日からこの校則で生活します」という開始日です。

2026年(令和8年)は、暮らしに関わる法律の改正が重なった年です。公式情報で確認できたものをまとめます。

時期 内容 状況
2026年1月1日 個人事業の開業届の期限が「開業から1か月以内」から「開業した年の翌年3月15日(確定申告の期限)まで」に 施行済み(2026年1月1日以後の開業が対象)
2026年4月1日 不動産を持つ人の住所・氏名の変更登記の義務化(変更から2年以内) 施行済み
2026年4月1日 離婚後の共同親権の選択、法定養育費(子1人月2万円)、財産分与・年金分割の請求期限が5年に 施行済み(同日以降の離婚が対象)
2026年5月21日 裁判のデジタル化(オンラインでの訴えの提起など) 施行済み
2026年6月24日公布 成年後見のしくみの見直し、遺言の押印(はんこ)を不要に、データで作った遺言を法務局が預かる新しい遺言の創設など まだ始まっていない。始まる日はこれから決まる
2026年の法改正を時期順に並べた年表。公布と施行の意味、施行済みとまだ始まっていない改正を色分け
公布=法律ができたという発表、施行=実際に使われ始めること

最後の行の「成年後見」は、認知症や障害などで判断が難しくなった人のために、家庭裁判所が選んだ人が、お金の管理や契約を手伝うしくみです。今の制度では、本人の判断の力の程度によって3段階に分かれています。2026年6月の改正は、この3段階を1つの形にまとめ、本人に必要な範囲だけ手伝う形にするものです。遺言についても、押印をしなくてよくすることや、データで作った遺言を法務局が預かる「保管証書遺言」をつくることが決まりました(今の法務局の保管制度は手書きの遺言が前提ですが、新しい制度はデータで作った遺言も対象になります)。ただし、どれも2026年10月時点ではまだ始まっていません。始まるまでは、今のルール(自筆の遺言には押印が必要など)が使われます。

ネット上には、改正前の説明が多く残っています。たとえば「財産分与の請求は2年以内」「開業届は1か月以内」という説明は、出来事の時期によっては、今は当てはまりません。調べた情報の日付と、どの時期の出来事に当てはまるかを確かめる習慣をつけましょう。

ここまでで覚えておくこと:公布は「法律ができたという発表」、施行は「使われ始めること」。2026年6月に公布された成年後見と遺言の改正は、まだ始まっていません。

法律の手続きの費用はいくら?|お金の目安と計算例

手続きのお金は、大きく次の3つに分かれます。

  1. 国に納めるお金:登録免許税(登記をするときに国に納める税金)や、裁判所の手数料などを払うための収入印紙
  2. 書類を集めるお金:戸籍・住民票・登記事項証明書などの手数料(1通あたり数百円程度が多い)
  3. 専門家に頼むお金:報酬(事務所ごとに異なる)と、実費(印紙代や郵便代など、実際にかかった費用)
手続きの費用の内訳を3つの箱で示した図。国に納めるお金、書類を集めるお金、専門家の報酬
費用は「国に納めるお金」「書類代」「専門家の報酬」の3つに分けて考える

ここでは、公式に決まっている金額を使った計算例を紹介します。どれも説明のための仮の例です。

計算例1:相続登記の登録免許税

前提:土地の固定資産税評価額が1,000万円、建物が200万円の実家を、子1人が相続する。

  • 相続による名義変更の登録免許税の税率は、不動産の価額の1,000分の4(0.4%)です。
  • 不動産の価額は、固定資産税の評価額が基本です。この金額は、毎年春ごろ市区町村から届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)に書かれています。見当たらないときは、市区町村の窓口で「評価証明書」を取ると分かります。
  • 計算:(1,000万円+200万円)×0.4%=1,200万円×0.004=4万8,000円

これに、戸籍などを集める費用がかかります。司法書士に頼めば、さらに報酬がかかります。なお、相続する土地の評価額(納税通知書で確認できる)が100万円以下なら、2027年3月31日までは、その土地の相続登記に登録免許税がかかりません(免税措置。建物は対象外)。

計算例2:相続税がかかるかどうかの目安

前提:相続人は、配偶者と子2人の合計3人。プラスの財産からマイナスの財産を引いた遺産の合計は4,000万円。

  • 遺産の額は、預金・不動産・株などのプラスの財産から、借金や葬式費用を差し引いて数えます。
  • 相続税では、土地の値段の物差しが計算例1と違います。主に「路線価(ろせんか)」(国税庁が道路ごとに決めた、土地1㎡あたりの値段)を使います。細かい計算は税務署や税理士に任せてかまいません。
  • 基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
  • 計算:3,000万円+600万円×3人=3,000万円+1,800万円=4,800万円
  • 遺産4,000万円は、基礎控除4,800万円以下なので、この例では原則として相続税はかからず、申告も不要です。

ただし、配偶者が相続する分の税金を軽くする特例(配偶者の税額の軽減)などを使って税額をゼロにする場合は、申告が必要です。基礎控除に近い場合は税務署か税理士に確認しましょう。

計算例3:相続放棄と遺言書の検認の費用

  • 相続放棄:申し出る人1人につき800円分の収入印紙。きょうだい3人がそれぞれ放棄するなら、800円×3人=2,400円分。これに連絡用の郵便切手(裁判所ごとに金額が違う)と、戸籍などの費用がかかります。
  • 遺言書の検認:遺言書1通につき800円分の収入印紙と郵便切手。
  • 遺言書を法務局に預ける:1通につき3,900円。

計算例4:会社の設立の登録免許税

結論から言うと、資本金が少ないうちは、株式会社は15万円、合同会社は6万円の最低額になります。

  • 株式会社:資本金の額×0.7%。ただし、その金額が15万円に満たないときは15万円。
  • 合同会社:資本金の額×0.7%。ただし、その金額が6万円に満たないときは6万円。
  • 例:資本金300万円なら、300万円×0.7%=2万1,000円です。最低額より少ないので、株式会社は15万円、合同会社は6万円になります。株式会社で0.7%の計算が15万円を超えるのは、資本金がおよそ2,143万円を超えるときです。

株式会社は、このほかに公証役場での定款認証の手数料などがかかります。

ここまでで覚えておくこと:費用は「国に納めるお金」「書類代」「専門家の報酬」の3つ。登録免許税などは計算式で決まるので、自分で概算できます。

よくある失敗と対策

はじめての人がつまずきやすい失敗と、対策をまとめます。

  • 失敗1:葬儀や片付けに追われて、相続放棄の3か月が過ぎてしまう。
    回避:亡くなってすぐ、郵便物・通帳・信用情報機関で借金やローンを調べ始める。3か月では調べきれないと分かったら、3か月が過ぎる前に、家庭裁判所に期間の延長を申し立てる(過ぎてからの延長は原則できない)。
  • 失敗2:亡くなった人の預金を、使ったり解約したりしてしまう。
    回避:財産を処分すると、相続放棄ができなくなる場合があります。放棄の可能性があるうちは、手を付ける前に専門家に確認する。
  • 失敗3:自宅で見つけた遺言書の封を開けてしまう。
    回避:封のある遺言書は、家庭裁判所で開封する決まりです。開けずに検認を申し立てる。
  • 失敗4:実家の名義を亡くなった親のままにしておく。
    回避:話し合いが長引くなら、3年以内に相続人申告登記をしておく。ただし義務が済むのは申し出た本人だけなので、相続人一人ひとりが申し出る(連名でまとめて申し出ることもできる)。
  • 失敗5:養育費や財産分与を口約束で済ませる。
    回避:取り決めを書面にし、公正証書にすることも考える。
  • 失敗6:改正前の古い情報を信じてしまう。
    回避:情報の日付と、出典が公的機関かを確かめる。法務省・裁判所・国税庁などの公式ページを最後に見る。
  • 失敗7:「時効は10年」と思い込み、お金の請求を先のばしにする。
    回避:5年と10年のどちらか早いほうで時効になる。5年を目安に早めに請求する。内容証明での請求は時効を6か月延ばすだけなので、その間に裁判などをしないと時効は止まらない。
  • 失敗8:退職後の健康保険・年金の手続きを忘れる。
    回避:退職前に、どの保険にするか決めておく。任意継続は20日、国民健康保険・国民年金は14日が期限。
  • 失敗9:期限の最終日を1日まちがえる。
    回避:「次の日を1日目」が原則。死亡届だけは当日から。最終日が休日のときは窓口に確認する。

ここまでで覚えておくこと:失敗の多くは「期限切れ」「勝手に動かす」「口約束」「古い情報」の4つです。

手続きを始める前のチェックリスト

手続きを始める前に、次の項目を確認しましょう。白いリストはそのまま印刷できます(ブラウザの印刷機能で印刷し、終わったものに印を付けて使えます)。

チェックリスト(印刷用)

  • □ 何が起きたか(出来事)を一言で書き出した
  • □ 関係する手続きと、その期限を書き出した
  • □ 期限の起点(死亡した日・知った日など)と、最終日を数えた
  • □ 窓口(役場・法務局・家庭裁判所・公証役場・税務署・労働基準監督署・年金事務所)を確認した
  • □ 必要な書類(戸籍・住民票・印鑑証明書・登記事項証明書など)を一覧にした
  • □ 財産だけでなく、借金やローンも調べた
  • □ 相続放棄の可能性があるなら、亡くなった人の預金や財産に手を付けていない
  • □ 相手や家族ともめているか、もめそうかを考えた
  • □ 自分でやるか、専門家に頼むかを決めた(見積もりを取った)
  • □ 2026年の法改正の対象になるか(いつの出来事か)を確認した
  • □ 公式ページで最新の手数料や期限を確認した

ここまでで覚えておくこと:チェックリストの最初の3つ(出来事・期限・起点)だけでも、手続きの見通しは大きく変わります。

無料・公的な相談窓口|どこに相談すればいい?

「専門家に頼むほどか分からない」「費用が心配」というときは、まず公的な相談窓口を使いましょう。迷ったら、最初の1本は法テラスのサポートダイヤル(0570-078374。平日9時〜21時、土曜9時〜17時)、職場のことなら総合労働相談コーナー、買い物や契約のトラブルなら188、と覚えておくと便利です。

相談先 相談できること
法テラス(日本司法支援センター) 法律トラブル全般の相談先の案内。収入・資産などの条件を満たせば、弁護士・司法書士の無料法律相談(1つの問題につき3回まで)
市区町村の無料法律相談 多くの自治体が、弁護士による無料相談の日を設けている(予約制が多い)
法務局 相続登記・住所変更登記などの登記手続案内(予約制)、遺言書保管、法定相続情報
家庭裁判所 相続放棄・検認・調停などの手続きの案内(法的な助言ではなく、手続きの説明)
税務署・国税庁の電話相談 確定申告・相続税・開業届など税金の一般的な相談
年金事務所 年金の受け取り、死亡後の手続き、年金分割
総合労働相談コーナー 解雇・いじめ・労働条件など職場のトラブル全般。予約不要・無料。所在地は厚生労働省のホームページに一覧
労働基準監督署 残業代の未払いなど、労働基準法の違反の相談
消費者ホットライン188 契約や買い物のトラブル。近くの消費生活センターを案内
弁護士会・司法書士会などの相談センター 各専門家団体の法律相談(有料・無料は内容による)

窓口では、あなたの代わりに相手と交渉したり、結論を決めたりはしてくれません。相手との交渉や、どちらが正しいかの判断が必要になったら、弁護士など専門家への相談を考えましょう。

ここまでで覚えておくこと:迷ったら、法テラスのサポートダイヤル、職場なら総合労働相談コーナー、買い物なら188。窓口は手続きの案内まで、交渉は専門家です。

用語ミニ辞典|必要なときに見る言葉

本文で出てきた言葉を、分野ごとにまとめました。分からない言葉が出たときに見てください。

相続のことば

  • 被相続人(ひそうぞくにん)
    亡くなった人のこと。役所や裁判所の書類によく出てきます。
  • 相続の開始
    人が亡くなったこと。「相続が始まった」は「亡くなった」と同じ意味です。
  • 法定相続人
    法律で決まっている相続人。配偶者はいつも相続人で、ほかは「子→(子がいなければ)親や祖父母→(それもいなければ)きょうだい」の順です。きょうだいが先に亡くなっていれば、その子(おい・めい)が代わりに相続人になります。
  • 相続放棄
    亡くなった人の財産も借金も一切引き継がないと、家庭裁判所に申し出ること。放棄した人は「初めから相続人でなかった」ことになり、亡くなった人の借金を払わなくてよくなります。ただし、亡くなった人の借金そのものは消えず、次の順位の親族が相続人になって引き継ぐことがあります。なお、放棄した人が自分で借りたお金は、相続とは関係がないので、そのまま残ります。
  • 法定相続分(ほうていそうぞくぶん)
    民法が決めている、相続人ごとの取り分の目安の割合。配偶者と子なら配偶者2分の1・子は残りを人数で等分(子2人なら各4分の1)、配偶者と親なら配偶者3分の2・親3分の1、配偶者ときょうだいなら配偶者4分の3・きょうだい4分の1です。話し合いで別の分け方にすることもできます。
  • 遺産分割協議
    相続人全員で、遺産の分け方を話し合うこと。例:「実家は長男、預金は長女」と決める。
  • 遺留分(いりゅうぶん)
    配偶者・子・親などに法律で守られた最低限の取り分。きょうだいにはありません。
  • 成年後見(せいねんこうけん)
    認知症などで判断が難しくなった人のために、家庭裁判所が選んだ人がお金の管理や契約を手伝うしくみ。
  • 保管証書遺言
    2026年6月に公布された改正で新しくつくられる遺言の形。今の法務局の保管制度は手書きの遺言が前提ですが、新しい制度ではデータで作った遺言も法務局が預かります(まだ始まっていません)。

書類のことば

  • 戸籍(こせき)
    生まれてから亡くなるまでの家族関係の記録。結婚や本籍の移動、法律の改正による作り直しなどで新しい戸籍ができるため、1人分が何通にも分かれていることがよくあります。
  • 本籍地(ほんせきち)
    戸籍が置かれている場所。住所とは別の市区町村のこともあります。分からないときは、本籍を載せた住民票を取ると分かります。
  • 戸籍謄本(とうほん)
    戸籍に載っている全員分の写し。本籍地の市区町村役場で取ります。
  • 住民票の除票(じょひょう)
    亡くなったり引っ越したりして消された住民票の記録。最後の住所の市区町村役場で取ります。
  • 戸籍の附票(ふひょう)
    その戸籍にいた間の住所の移り変わりの記録。本籍地の市区町村役場で取ります。
  • 法定相続情報一覧図
    相続人が戸籍をもとに家族関係を1枚の図にして法務局に出し、法務局が確認して写しを無料で出してくれるもの。銀行の手続きで、戸籍の束の代わりに使えます。
  • 登記事項証明書
    法務局の「持ち主名簿」に書かれた内容の写し。家の持ち主が誰になっているか確かめられます。
  • 印鑑証明書
    届け出た印鑑(実印)が本人のものだと証明する書類。市区町村で取り、遺産分割協議書などに添えます。
  • 申述書(しんじゅつしょ)
    家庭裁判所に申し出るときに出す書類。
  • 公正証書
    公証人(法律の専門家である公務員)が作る公文書。公正証書遺言や、養育費の取り決めに使います。
  • 内容証明郵便
    「いつ、どんな内容の手紙を出したか」を郵便局が証明する郵便。お金の請求の通知に使います。

お金・税金・仕事のことば

  • 所得(しょとく)
    売上や収入から、かかった経費を引いた「もうけ」。税金は所得をもとに計算します。
  • 確定申告
    1年の所得と税金を計算して税務署に出すこと。会社員は会社が代わりに計算(年末調整)するので、しないことが多いです。
  • 準確定申告
    亡くなった人の分の確定申告を、家族が代わりに行うこと。
  • 固定資産税
    土地や建物の持ち主が、毎年市区町村に払う税金。
  • 収入印紙
    国に手数料や税金を払うための、切手のような紙。郵便局などで買えます。「800円分」とは、800円分の収入印紙を書類に貼って出すことです。
  • 登録免許税
    登記をするときに国に納める税金。相続による名義変更は、不動産の評価額の0.4%です。
  • 債権(さいけん)
    相手に「お金を払って」などと求められる権利。貸したお金を返してもらう権利など。
  • 消滅時効
    一定の期間、権利を使わないと請求できなくなるしくみ。
  • 催告(さいこく)
    相手に何かをするよう求めること。お金の請求では、裁判の外で支払いを求めること(内容証明郵便での請求など)を指し、時効の完成を6か月先に延ばす効果しかありません。
  • 連名(れんめい)
    1枚の書類に、複数の人が名前を並べて書くこと。
  • 離職票
    会社をやめたあとに会社から届く書類。失業手当の手続きに使います。
  • 雇用保険
    働く人が失業したときなどにお金が出る国の保険。失業手当はここから出ます。
  • 労働局
    都道府県ごとに置かれた、厚生労働省の出先の役所。労働基準監督署はその下にある、より身近な役所です。

家族・裁判のことば

  • 調停(ちょうてい)
    裁判所で、第三者を交えて話し合うこと。離婚調停、遺産分割調停など。
  • 審理(しんり)
    裁判所が、当事者の言い分や証拠を聞いて調べること。
  • 確定(かくてい)
    裁判所の決定などが、もう変えられない状態になること。
  • 民事訴訟(みんじそしょう)
    お金や契約など、個人や会社どうしの争いを裁く裁判。
  • 親権(しんけん)
    子どもの世話や財産の管理をする親の権利と義務。
  • 養育費
    子どもを育てるためのお金。離れて暮らす親が支払います。
  • 年金分割
    結婚していた間の厚生年金の記録を、離婚のときに夫婦で分けること。将来もらう年金の額に反映されます。

次に読む記事|カテゴリ別のおすすめ

このガイドで全体像をつかんだら、自分の場面に合う記事で詳しく確認しましょう。各カテゴリから3本ずつ選びました。「近日公開」と表示されている記事は公開の準備中で、公開されるとリンクになります。

相続の基礎

相続登記・不動産

遺言・遺留分

契約書・お金のトラブル

離婚・家族

開業・会社設立

労務・社会保険

よくある質問(FAQ)

Q. 法律の手続きは、専門家に頼まず自分でもできますか。
A. 死亡届、相続放棄、相続登記、遺言書の保管、開業届などは、本人が自分で行うこともできます。法務局の登記手続案内(予約制)など、窓口の案内も使えます。ただし、相手ともめている、金額が大きい、期限が迫っているときは、専門家への相談を考えましょう。

Q. 弁護士と司法書士は、何が違うのですか。
A. 弁護士は、交渉や裁判の代理など、法律の争い全般を扱えます。司法書士は登記の専門家で、法務局や裁判所に出す書類の作成を扱います。法務大臣の認定を受けた司法書士は、請求額が140万円以下のもめごとについて、簡易裁判所での裁判の代理もできます。

Q. 相続登記をしないと、すぐに罰金を取られますか。
A. 相続登記の義務は、取得を知った日の翌日を1日目として3年以内です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。過料は刑罰の罰金とは違い、前科にはなりません。法務省の案内では、登記を担当する法務局の職員(登記官)から「登記をしてください」というお知らせが届くなどの手順を経て、裁判所が判断します。

Q. 賃貸に住んでいて引っ越しました。登記は必要ですか。
A. 必要ありません。住所変更登記の義務は、家や土地を持っている人だけが対象です。住民票の移し替え(転居届など)は、別に市区町村で必要です。

Q. 期限の最終日が土曜日や日曜日だったら、どうなりますか。
A. 手続きによって違います。税金の申告は次の平日が期限になります。そのほかの手続きは、窓口に確認しましょう。迷ったら、休日の前の平日までに済ませるのが安全です。

Q. 貸したお金の時効は、5年と10年のどちらですか。
A. 2020年4月以降の契約なら、「請求できることを知った日の翌日を1日目に5年」と「請求できるようになった日の翌日を1日目に10年」のどちらか早いほうです。貸した人は返済日を知っているのがふつうなので、5年が目安です。内容証明で請求しても時効は6か月延びるだけなので、その間に裁判などをする必要があります。

Q. 個人事業の開業届は、いつまでに出せばよいですか。
A. 2026年1月1日以後に開業した場合は、開業した年の分の確定申告の期限、つまり原則として翌年3月15日までです。たとえば2026年4月の開業なら2027年3月15日までです。青色申告をしたい場合は、承認申請書の期限(原則、開業から2か月以内)に注意してください。

Q. 法テラスの無料相談は、自分も使えますか。
A. 収入(平均月収)や資産(現金・預貯金)が一定の基準以下であることなどが条件です。当てはまるかどうかは、法テラスのサポートダイヤル(0570-078374)やホームページで確認できます。

Q. 「公布」されたのに使えない法律があるのはなぜですか。
A. 公布は法律ができたという発表で、実際に使われ始めるのは施行の日からだからです。2026年6月に公布された成年後見と遺言の改正は、2026年10月時点で施行日が決まっていません。

Q. このガイドの内容だけで手続きをしても大丈夫ですか。
A. このガイドは全体像をつかむための一般的な情報です。個別の事情で結論が変わることがあるので、提出前に窓口や専門家に確認してください。

出典

このページは、e-Gov法令検索の条文と、法務省・法務局・裁判所・国税庁・厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会・法テラス・消費者庁などの公式情報をもとに、2026年10月時点で確認できた内容をまとめたものです。主な出典は、ページ末尾の一覧に示しています。

法律や手数料、期限は改正されることがあります。手続きの前に、必ず各機関の公式ページで最新の情報を確認してください。このページは一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の事案についての法律相談・税務相談ではありません。特定の事務所や専門家をおすすめするものでもありません。具体的な判断が必要なときは、弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士などの専門家や、公的な相談窓口に相談してください。

出典(一次情報)