任意後見契約とは公正証書で作る流れ・費用・監督人の役割

任意後見契約は、元気なうちに将来の後見人と事務の内容を公正証書で決めておく契約です。契約の流れ、公証役場の費用の目安(手数料1万3,000円など)、任意後見監督人の選任、法定後見との違いを整理します。
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任意後見契約とは
任意後見契約とは、本人に十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が低下したときに備えて、誰に、どのような事務を任せるかを、あらかじめ契約で決めておく制度です。日本公証人連合会の案内では、任意後見人となる人(任意後見受任者)と、委任する事務の内容を、公正証書による契約で定めておくと説明されています。
任意後見契約は、法律(任意後見契約に関する法律)により、必ず公正証書で作らなければなりません。口約束や、自分で作った書面だけでは、任意後見契約としての効力が生じません。
本人の判断能力が不十分になったら、任意後見受任者や親族などが、家庭裁判所に、任意後見人を監督する「任意後見監督人」の選任を申し立てます。監督人が選任されて、初めて任意後見契約の効力が生じ、任意後見人が、本人に代わって契約に定めた事務を行えるようになります。
法定後見制度(家庭裁判所が後見人を選ぶ制度)と比べて、「誰に任せるか」を本人が自分で決められる点が、最も大きな特徴です。
この記事は一般的な説明です。契約の内容は、個々の事情で変わります。公証役場や、弁護士・司法書士などの専門家に相談してください。
任意後見契約の基本
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 任意後見受任者(将来の後見人)を決め、任せたい事務の内容を整理する |
| 2 | 公証役場に相談し、必要書類(本人・受任者の印鑑証明書、戸籍謄本、住民票など)を準備する |
| 3 | 公証人が、契約内容の案を作成し、本人と受任者が確認する |
| 4 | 公証役場で、公正証書により、任意後見契約を結ぶ |
| 5 | 公証人の嘱託により、法務局に、任意後見契約が登記される |
| 6 | 判断能力が低下したら、家庭裁判所へ、任意後見監督人の選任を申し立てる |
| 7 | 監督人の選任後、任意後見人が事務を開始する |
費用の目安
日本公証人連合会の案内によると、任意後見契約の公正証書を作成する費用の目安は、次のとおりです(最新の金額は、公証役場や連合会の案内で確認してください)。
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 公正証書の作成手数料 | 1契約につき1万3,000円(枚数が超過する場合は1枚ごとに加算) |
| 収入印紙代(登記のためのもの) | 2,600円 |
| 登記嘱託手数料 | 1,600円 |
これ以外に、戸籍などの書類の取得費用や、専門家に依頼する場合の報酬がかかります。
任意後見監督人の役割
任意後見監督人は、任意後見人が、契約の内容どおり、適切に事務を行っているかを監督します。任意後見人から、財産目録などを提出させて、確認する役割です。監督人には、報酬が必要になる場合があり、その額は家庭裁判所が決めます。
任意後見の契約の類型
任意後見契約には、判断能力が低下した後に、任意後見を開始する「将来型」のほかに、判断能力がある間は、財産管理などを任せる別の委任契約を組み合わせる形(移行型)もあります。実際には、本人の状況や希望で、組み合わせが選ばれます。
任意後見契約の具体例
次の例は、説明用の仮のものです。
| ケース | 考え方 |
|---|---|
| 一人暮らしで、将来認知症になったときの財産管理が心配 | 信頼できる親族や専門家を、任意後見受任者にして、契約を結ぶ |
| すでに認知症が進んでいる | 判断能力が不十分だと、任意後見契約を結べない場合がある。法定後見を検討する |
| 判断能力が低下して、任意後見を始めたい | 家庭裁判所に、任意後見監督人の選任を申し立てる |
| 任意後見人に、不動産の売却を任せたい | 契約書に、その権限(代理権)を明記しておく必要がある |
任意後見人が持つ権限は、契約で定めた範囲に限られます。契約に書いていない事務は、任意後見人が代理できません。そのため、任せたい事務の内容を、具体的に書くことが大切です。
任意後見契約の実践ステップ
- 誰に任せたいか、何を任せたいか(財産管理、医療・介護の契約など)を整理する。
- 家族と話し合い、任意後見受任者の候補を決める。
- 公証役場に相談し、契約内容の案を作る。
- 必要書類を準備し、公証役場で契約を結ぶ。
- 契約書と、登記の内容を、保管する。
- 定期的に、契約の内容が、現在の希望に合っているか見直す。
任意後見契約の注意点
- 任意後見契約の効力は、監督人の選任後に生じるため、判断能力が低下してから、申立てまでの期間が空くことがある。
- 本人が亡くなった後の事務(葬儀、相続手続きなど)は、任意後見の範囲に含まれない。別に、死後事務委任契約を検討する。
- 任意後見人の権限に、医療行為への同意や、身元保証は含まれない。
- 受任者が、適切に事務を行わない場合に備えて、監督人の制度がある。
- 令和8年6月公布の民法等の改正法で、成年後見制度(任意後見を含む)の見直しが決まっている(施行は政令で定める日)。契約前に、法務省や公証役場で最新の扱いを確認する。
任意後見契約でよくあるミス
- 判断能力が低下してから、任意後見契約を結ぼうとする。
- 任せたい事務の内容を、あいまいに書く。
- 任意後見契約があるから、死亡後の手続きも任せられると考える。
- 受任者に、契約の内容や、自分の希望を、十分に伝えていない。
任意後見契約のチェックリスト
- 任意後見受任者の候補を決めた
- 任せたい事務の内容を整理した
- 公証役場に相談した
- 必要書類を準備した
- 費用の目安を確認した
- 死後の事務について、別の対策を検討した
任意後見契約のFAQ(よくある質問)
Q. 任意後見契約は、自分で作れますか?
A. 公正証書で作る必要があります。公証役場で、公証人に作成してもらいます。
Q. 任意後見人は、親族でないとなれませんか?
A. 親族に限りません。弁護士、司法書士など、専門家も、受任者になれます。
Q. 法定後見との違いは?
A. 法定後見は、判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選びます。任意後見は、元気なうちに、自分で後見人を選んで契約します。
筆者の見解(任意後見契約)
任意後見契約は、「自分の意思で、将来の備えを選べる」点に価値がある制度だと考えます。私見では、契約を結ぶこと自体より、受任者と、「何を、どの範囲で任せるか」を、事前によく話し合っておくことが、後の安心につながります。また、死後の事務や、身元保証など、任意後見ではカバーできない部分もあるため、遺言や他の契約とあわせて、全体の備えを考えるのが現実的です。
任意後見契約の関連項目
出典(一次情報)
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法律相談・税務相談・社会保険労務の助言ではありません。法律や制度は改正されることがあるため、最新の内容は各省庁・裁判所などの公式サイトや、専門家(弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士など)でご確認ください。「筆者の見解」は一つの考え方です。